研究課題/領域番号 |
18560642
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
和泉 充 東京海洋大学, 海洋工学部, 教授 (50159802)
|
研究分担者 |
村上 雅人 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00365545)
平林 泉 超電導工学研究所, 材料物性研究部, バルク材料開発室長 (80126151)
坂井 直道 超電導工学研究所, 材料物性研究部, バルク材料開発室長補佐 (00415936)
井田 徹哉 広島商船高等専門学校, 電子制御工学科, 講師 (80344026)
|
キーワード | バルク高温超電導体 / ナノ粒子分散効果 / 磁束のピン止め / パルス着磁 / バルク高温超電導磁石 / 液体窒素冷却超電導モータ / ネオン冷却バルク超電導モータ / ピン止め力 |
研究概要 |
本研究は液体窒素温度で実用が始まっている酸化物高温超電導体の結晶の塊であるバルク高温超電導体として比較的磁石性能の高いGdBa_2Cu_3O_<7-δ>について、空気中で溶融成長により、磁石性能の向上を目指したものである。研究は原子レベルからミクロ構造組織にわたる領域で行われ、まず、この物質では結晶構造内部でGdとBaとが固溶体を形成するがこれの超電導特性を向上させるためにはアニール処理が有効であることを示した。次にあらかじめ溶融成長プロセスの前段階でBaO_2,BaCuO_<2-x>,BaCO_3などを添加することによって固溶体形成が抑制され臨界電流やピン止め特性が向上することを明らかにした。次に、バルク体における磁束ピン止め中心として添加される第2相物質Gd_2BaCuO_5の粒子サイズに注目して微細化を試みる一方、新たな第2相物質としてGd_2Ba_4CuMO_x(M=Mo, Zr etc.)を新たに合成して磁束ピン止めに有効であることを示した。超電導体中に侵入ピン止めされる磁束はナノメートルの大きさであるが著者は、ZrO_2などのナノ粒子の添加を溶融成長に導入して臨界電流密度を99,300A/m^2と約10^5A/m^2まで向上させることに成功したばかりか電子顕微鏡観察によってバルク磁石中のナノ粒子の生成・挙動を明らかにした。バルク磁石は超電導体の連続体であることから線材を電線に加工してコイル化したものに比べて狭い空間に高密度の磁束を発生させることが可能であり、バルク体から切り出した一部の領域といえどもこのような結果を得たことの意義は大きい。しかしながら、臨界電流の著しい向上はバルク磁石の部分に留まっており、磁石全面にわたって均一に高い臨界電流密度が得られたわけではない。今回達成した高臨界電流密度の領域が磁石全面に均一化された素材を得ることが今後の次の課題となる。このように本研究では空気中の製造プロセスによっても従来の酸素ガス雰囲気等のコストのかかる設備なしに高性能の磁石を作製できる端緒を得たと言える。
|