本年度は、銅生地内部に固体相分離により形成される鉄及びコバルト磁性微粒子の組織発展過程をTEMによって系統的に追跡するとともに、SQUIDを用いて磁気特性の変化をM-H測定、M-T測定を実施した。鉄微粒子については、密度汎関数法計算も行った。強磁性という意味では、共通性を持つコバルトと鉄であるが、組織発展過程において、前者は比較的、単純な変化を示すのに対して鉄は構造変態と磁気変態が生じるために現象は複雑に見える。鉄ではfcc構造からbcc構造への変態において格子歪の連続的変化する過程で、磁性はc/aが1.22で急激に変化するという理論的予測を得た。実験的に組織発展過程を調べた結果も、大筋で理論予測に沿った解釈が可能であることが分かった。このような理論予測と実験的検証の対比はこれまで行われておらず、新たな進展と考えられる。コバルト微粒子については、構造変化はほとんどないが、磁気異方性が明瞭に関与する現象が観察された。ローレンツ顕微鏡法低角電子回折でも一連の過程で低角電子回折パターンを磁化方向とその大きさを調べた。粒子サイズと磁化の大きさは対応しているが、とくにFeにおける構造変態の段階で、大きさに跳びが見られること、整合-非整合の遷移段階でも変化が見られており、組織と磁気特性の緊密な相関性を証明する結果が得られた。
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