研究概要 |
β型Ti合金において低ヤング率を発現するマルテンサイトの予変形に伴う弾性挙動変化の明確化を行う。また,圧延によるマルテンサイトのカオス的組織のキャラクタリゼーションを行うとともに,応力や熱的刺激によってカオス的組織から形成する粗大なマルテンサイトの再構築メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度行った主な研究内容は以下の通りである。 ・Ti-Mo系合金(5-9Mo)を作製し,自由共振式ヤング率測定器にて溶体化焼入れ材のヤング率を測定した。その結果,Ti-6mass%Moが最もヤング率が低いことが明らかとなった。 ・上記合金と14,20Mo合金焼入れ材の冷間圧延に伴うヤング率変化を測定した。その結果,8Moでは圧延によって,最初ヤング率は低下するが,その後の圧延では変化しなかった。また,14Moでは圧延に伴って10%程度の増加が認められた。その他の合金については圧延に伴う変化は観察されなかった。 ・8Mo合金の623K時効処理に伴うヤング率変化を測定した結果,166hまでで約18%のヤング率の増加が認められた。 ・8Mo焼入れ材を80%の強圧延を施し,室温にて引張破断したTEM組織観察を行った。その結果,引張によって再構築されたと思われる粗大なマルテンサイトが形成されていることが分かった。 ・8Mo合金焼入れ材を20%の冷間圧延後,673Kにて900s焼鈍を施し,TEM観察を行った。熱処理によっても粗大なマルテンサイトが回復していることが観察された。しかし,その成長方向がc軸方向とは異なり,b軸方向に成長しているものも観察された。このことより整然としたβ相から焼入れなどによって形成されるマルテンサイトと,圧延によってchaoticな組織から形成されるマルテンサイトとで周りから受ける拘束が異なるため,マルテンサイトの形態に違いが生じるものと考えられる。
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