研究概要 |
昨年度のTi-Mo合金系の低ヤング率特性と比較する目的で,今年度はTi-Nb系合金の焼き入れ材について,組成および加工に伴うヤング率変化を測定した。対象とした合金組成はTi-15〜30mass%Nbである。焼き入れ材の結晶構造はXRD測定の結果,15Nbでα'マルテンサイト,20Nb以上でα"マルテンサイトが形成されていることが分かった。また硬さ試験の結果,Ti-Mo系と同様にα"マルテンサイトが形成される20Nbでミニマムを示したことから,α"マルテンサイトは合金系にかかわらず軟らかい構造であることが明らかとなった。一方,自由共振法によるヤング率測定では15Nbが最も低い値を示し,Nbの増加に伴ってヤング率は上昇傾向を示した。さらに焼き入れ材を弱圧延すると20Nbでのみヤング率が低下し,他の組成では上昇した。しかしながらヤング率の絶対値をTi-Mo系と比較した場合,大きな差異は認められなかった。したがって,最も低ヤング率が発現するTi-6Moの比重が4.65であるのに対し,Ti-20Nbでは4.96となること,およびNbの価格がMoより高価であることからTi-Mo系の方がコストパフォーマンスに優れていることが分かった。低ヤング率を発現する合金組成はTi-MoおよびTi-Nbに共通してα'/α"の境界組成である。この原因をマルテンサイトの格子定数変化の観点から調査した結果,Tiにβ安定化元素を添加すると,α'が形成される組成範囲ではβ安定化元素の添加量に伴って格子定数は増加するが,更に添加量を増やしてα"が形成される範囲になると,逆に格子定数が減少することが明らかとなった。したがって,単位体積の変化率はα'/α"境界組成で最大となり,このことがヤング率の極小を発現させる原因と考えられた。
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