研究概要 |
焼入れによりα"マルテンサイトが形成されるTi-8mass%Mo母合金をアーク溶解により再溶解し,徐冷により粗大な旧β結晶粒を有するインゴットを作成した。インゴットをスライスし,その板材の粗大結晶粒の分布状態を確認するとともに測定対象とする結晶粒を5つ選出した。その後焼入れを行いα"マルテンサイトを形成させ,各結晶粒におけるEBSP測定を行った。EBSP解析ではβ相とα"の方位関係およびマルテンサイトバリアントの分布状况を調査した。引き綾き10%の冷間圧延後,EBSP測定を行いマルテンサイトの消失状態を取得した。特にマルテンサイトの特定のバリアントが圧延によって消失することが明らかとなった。また,圧延後の極点図形解析の結果,マルテンサイトよりもβ相の方が著しく変形していることが明らかとなった。すなわちβ相はすべり変形を主体とした変形様式をとり,すべりに伴う結晶の回転が著しいのに対して,マルテンサイトは見かけ上,消滅しているものの,双晶変形を繰り返した結果,非常に微細な結晶に分割されているものと考えられた。続いて圧延後の同一板材から引張試験片を作成し約10%の引張変形を与えた。同一結晶粒に於けるマルテンサイトの分布をEBSP測定した結果,圧延により消失したマルテンサイトは明らかに再構築され体積分率が大編に増加していることが明らかとなった。マルテンサイトの圧延による消失と引張による再構築されやすいバリアントの考察をSchmidファクターとの関連性から検討を行ったが,決定的な因果関係は特定できなかった。しかしながら結晶粒を横断するほどの巨大なマルテンサイトの再構築には,α"およびβ両棺に於ける共通の変形面が必要であり,{112}βがそれに相当することが示唆された。
|