研究概要 |
本研究では金属学における画期的な発見でありながらその機構解明が据え置かれてきた感のあるGPゾーンを対象に取り上げ、第一原理計算と熱力学的状態図計算を組み合わせた独自の手法を用いて、熱力学的側面からのGPゾーン形成の原因解明を研究目的としている。本年度は、Al-Cu2元系fccを基本構造とする仮想的な規則構造を構築し、各構造の生成エネルギーをFLAPW(Full Potential Linearized Augmented Plane Wave)法による第一原理計算を用いて算出しながら、有限温度における準安定規則構造や固溶体の準安定自由エネルギーを計算した。さらにこれらを実験値として取り入れながら、既存の熱力学データ、相境界データを用いてAl-Cu各2元系をはじめとして、Al-Ag、Al-Mg、Be-Cu、Al-Siなどの基本2元系の熱力学的解析を行った。平成19年度は、実験によりGPゾーン形成の事実が確認されているAl-Cu,Cu-Be,Al-Ag,Al-Mg2元系を対象に、第一原理計算とクラスター展開法を用いて準安定規則構造や固溶体の準安定自由エネルギーを計算しほぼ計画が完了した。またそこから導出されるクラスターの相互作用エネルギーを用いて各合金系のシミュレーションによる微細組織の時間変化について研究を進め、析出のTTT曲線の計算をおこなった。その結果、GPゾーンは、固溶体内での準安定2相分離と低温での過剰空孔の働きによる溶質元素の高速拡散が原因で生成することがほぼ明らかとなった。
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