研究概要 |
本研究では実用化が期待されていながらも、超伝導体にとって最も基本的で重要な特性である臨界電流密度J。(電気抵抗ゼロで流すことができる電流密度の上限値)を支配する主たる要因であるピン止め機構に関して未解明の点が多く残る金属間化合物MgB_2超伝導体について、ナノ構造を制御した試料を作製し、特性と微細構造の相関からピン止め機構を明らかにすることを目的に研究を行った。 本年度は、超高真空中で電子ビーム共蒸着法を用いて組成を変化させたニホウ素化マグネシウム(MgB_2)をシリコン単結晶基板上に作製し、結晶構造の変化、化学的安定性、超伝導特性(臨界温度:Tc,臨界電流密度Jc)を調べ、以下のことを明らかにした。 (1)MgB_2の組成には不定比が存在する。Mg過剰組成の試料は大気中で容易に変質する。 (2)Mg不足組成にするとc軸長が伸びる、 (3)Mg不足組成にすると超伝導臨界温度が低下する。 (4)Mg不足組成にすると点欠陥が導入され、臨界電流密度を向上する。
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