平成18年度の科学研究費補助金により購入したフラットパネルセンサーによりタンパク質結晶の欠陥、とくに、転位の研究に大きな貢献をすることができた。 われわれはこれまでに白色放射光トポグラフによってタンパク質結晶中の転位の観察に成功してきた。しかしながら、白色放射光トポグラシでは高次の反射を含み、分解能が十分にあがらず、転位像の巾が広くなり、明確な像を得ることができなかった。また、タンパク質結晶では、反射強度が弱いために、単色放射光トポグラフのラウエ・スポットの特定が難しかった。これを解決するためにフラットパネルセンサーによってラウエ・スポットを探し、確認し、その後にフィルムによって撮影を行うことができるシステムを完成させた。それにより、正方晶、斜方晶、単斜晶リゾチウム結晶中の転位の分布、転位密度、バーガースペクトルの決定を行うことができた。とくに、今まで観察されていなかったループ状の転位や曲線状の転位、またセクターバウンダリーなどが新たに確認された。また、単斜晶リゾチウム結晶では、転位密度も高く、ベルグ効果による表面の粗さが転位の分布と対応していることもわかった。これによりタンパク質結晶の成長機構と転位の分布の因果関係を知ることができるようになった。 さらに、ロッキングカーブの測定では、フラットパネルセンサーとCCDカメラを連動させることによって、今までの結晶全体のロッキングカーブではなく、結晶の任意の位置でのロッキングカーブが観測できるシステムの構築が可能になった。これにより、同一試料によってロッキングカーブの半値巾と転位の歪との一対一の対応が可能になった。 以上のような転位に関する知見は大型のタンパク質単結晶の育成のための基本的なデーターとして重要になり、タンパク質結晶の構造解析に大きく貢献ができるものと考える。
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