研究概要 |
複数の金属ガラス試料Zr_<50>Cu_<40>Al_<10>を用いて,超音波音速測定から,室温での過剰自由体積の量と機械的特性との相関を調べた.また,金属ガラスの低温での超音波伝播の異常性と過剰自由体積の量との相関を調べるために,熱処理前後の試料を用いて,室温(288K)から液体窒素温度(93:K)までの範囲で超音波音速の温度依存性を調べた. その結果,熱処理により,縦弾性定数C_<11>,横弾性定数C_<44>,C_<12>,ヤング率E,剛性率Gの値は上昇し,熱処理によってZr_<50>Cu_<40>Al_<10>金属ガラスは変形しにくくなった.また,熱処理による密度の増加率(単位質量当りの体積の減少率=体積減少率)と機械的諸量の増加率の相関は,ボアソン比を除くと,定性的には正の相関が見られた.液体状態から急冷されて形成された金属ガラスの構造には,金属結晶には存在しないアモルファス特有のZr-Al結合のネットワークが存在することが報告されているので,熱処理によりこの過剰自由体積に伴うZr-Al結合のネットワークが消失し,機械的特性が変化したと考えられる. 弾性定数の温度依存性において,200Kから260Kまでの温度領域の音速の振る舞いは,試料ごとに異なる振る舞いを示した.しかし,いずれの試料においても,(1)温度降下とともに200K以下で音波伝播が不能になる,(2)温度上昇に伴い約200K近傍で音波伝播が復活する,(3)260K:以上の温度では温度依存性に履歴がない,等の現象は共通に観測された.また,室温と液体窒素温度間で,温度降下伴う弾性定数の増大率は,熱処理前の試料より熱処理後試料において大きかった.この原因は特定できず,次年度の課題とした.
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