本年度は、気孔の形態を制御する因子として、凝固速度と温度勾配に着目し、気孔の伸び方向や気孔率の変化について検討を行った。 結果、5mm/hの凝固速度では気孔は形成されず、400mm/hまでは凝固速度とともに気孔率が増加し、その後緩やかに減少した。アルミナの融点における固相と液相間の水素ガス溶解度差に基づいて気孔が形成すると仮定するば、過飽和の水素が一旦固相に取り込まれる必要があり、ある程度、凝固速度が速くなければ気孔が形成しないことが理解できる。アルミナ融液の熱伝導率は金属よりも大きいため、200mm/hほどの凝固速度では、固液界面が上に凸となる。しかし凝固速度が増加し、400mm/h以上では熱伝導率が低いために、固液界面が凹となる。すなわち、凝固速度が400mm/hまでは固液界面が凸、400mm/h付近で平ら、400mm/h以上では凹となる。凝固は固液界面に垂直に進行するため気孔の伸び方向も、固液界面の形状により変化する。凝固方向に平行な断面観察により、これらのことが確認された。固液界面が平らから凹になる400mm/hでは、気孔は試料の中央部に集まり癒着し、液相へ放出されやすくなる。そのため、気孔率は緩やかに減少する。
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