本研究ではBaTiO_3およびBaTiO_3-Bi_<1/2>Na_<1/2>TiO_3系固溶体を対象に、<100>、<110>および<111>方向に結晶配向を付与する技術を開発し、配向方向と微細構造が圧電特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。本年度は3年計画の1年目であり、BaTiO_3に対する<110>および<111>方向への結晶配向付与法を開発した。 <110>配向BaTiO_3を、針状TiO_2粒子を反応性テンプレート粒子として用いた反応性テンプレート粒子成長法(RTGG法)により作製した。針状TiO_2粒子と通常のBaCO_3粒子の混合物をテープ成形したシートを切断、圧着し、成形体とした。この成形体を仮焼した後、焼成した。針状TiO_2粒子の軸方向が<001>方向であり、シート中でこの方向がテープ成形方向に並ぶ。仮焼によりTiO_2とBaCO_3が反応してBaTiO_3が生成するが、このときTiO_2とBaTiO_3の結晶方位の間にトポタクティックの関係があり、仮焼体は<110>が一方向に並んだBaTiO_3粒子となる。この仮焼体を焼結することにより、緻密で高配向度の<110>配向BaTiO_3焼結体が得られた。 <111>配向BaTiO_3を、板状BaTiO_3粒子をテンプレート粒子として用いたテンプレート粒子成長法(TGG法)により作製した。初めに板状BaTi_O3粒子を合成した。溶融塩法により板状Ba_6Ti_<17>O_<40>粒子を合成し、これとBaCO_3を溶融塩中で反応させることにより板状BaTiO_3粒子を得た。板状Ba6Ti17040粒子ではく001>方向が板面に垂直であるが、Ba_6Ti_<17>O_<40>とBaTiO_3の間のトポタクティックな関係から、この方向がBaTiO_3の<111>方向になる。こうして作製した板状BaTiO_3粒子と等軸BaTiO_3粒子の混合物をテープ成形したシートを切断、圧着し、成形体とした。成形体を脱脂した後、焼成した。シート中で板状BaTiO_3粒子の板面がシート面に平行になり(BaTiO_3粒子の<111>方向がシート面に垂直になる)、焼結中に緻密化と同時に、板状BaTiO_3粒子が等軸BaTiO_3粒子を取り込んで成長することにより、緻密で高配向度の<111>配向BaTiO_3焼結体が得られた。
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