グラファイト(膨張化グラファイトシート、Grafoi1)をホストとして金属セシウムをインターカレーションし、セシウム濃度の異なる4種類の層間化合物(CsC24、CsC20、CsC16、CsC12)を合成した。これらの化合物の194Kでのエチレン吸収アイソサームを決定したところ、エチレン吸収量はCsC24で最も大きく(1モルのCsC24あたり約1.9モルのエチレンが吸収された)、セシウム濃度の増加と共に減少し、CsC20では1.5モル、CsC16で1モル、CsC12で0.6モルのエチレンが吸収されることが明らかにされた。これはCs濃度増加に対してナノスペース容積が単調に減少するためであると考えられた。 このようにして得られた三元系化合物を室温で約2ヶ月間保持してエチレンのオリゴメリゼーションを促進させた後、水中に投入したところCs(C2H4)1.9C24以外の三元系化合物は水に浮いた相と沈んだ相に分かれたが、Cs(C2H4)1.9C24はすべてが完全に浮いた。またこれらの溶液中のCs濃度を分析した結果、Cs(C2H4)1.9C24の場合には溶液中のCs濃度は他のものと比べてきわめて低く、逆に浮遊物中には高濃度のCsが存在していることが確認された。以上のことからCsC24においてオリゴマー反応が最も効率的に進行していること及びオリゴマーネットワークが発達することによってセシウムと水との反応を著しく阻害しているものと考えられた。 CsC24と分子との相互作用を明らかにするためにCsC24の分子吸収に伴う電気抵抗率を決定した。1モルのCsC24あたりエチレン吸収量が1モルまではほとんど抵抗率に変化がみられず、エチレンがナノスペースに容易に吸収されると考えられたが、1モルを越えた付近から急激な抵抗率増加が観測され、エチレンとの相互作用が吸収量によって大きく異なることが見出された。
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