研究概要 |
内水相としてリン酸水素二カリウム(K_2HPO_4)水溶液,外水相として硝酸カルシウム(Ca(NO_3)_2)水溶液,油相媒体としていくつかの有機液体をそれぞれ用いて複合エマルションを調製し,50℃で3〜24h撹拌を維持する界面反応法によりヒドロキシアパタイト(HAp)ミクロスフィアを調製した。 K_2HPO_4-Ca(NO_3)_2系におけるHApの合成に関して,化学ポテンシャルに基づく熱力学計算を実施し,相図を描画することにより実験条件の妥当性を評価した。 油相媒体種は化学反応式には関係しないにもかかわらず,生成するHApミクロスフィアの形態に影響を及ぼすことを見出した。ヘキサンあるいはシクロヘキサンを用いた場合に真球状で凝集の少ないミクロスフィアが得られた。ベンゼンあるいはトルエンを用いた場合には不規則形状で凝集が著しい生成物が得られた。また,油相媒体種によりX線結晶子径が変化する傾向を見出した。以上の結果について,結晶成長速度に対する油相媒体種の粘度と油相中のイオンの移動速度の影響に関して考察した。今後,マイクロカプセル壁材として形態を制御するための重要な知見および指針が得られた。 鏡面研磨したチタンをフッ化水素酸(HF)によってエッチングし,HApミクロスフィアの付着量および被覆率に対するHF濃度の関係を調査した。チタン表面にHApミクロスフィアの粒径に匹敵する寸法の起伏を形成した条件において,付着が最大となった。さらに,処理温度プロファイルを工夫することにより付着を向上させることができた。この結果から,HAp壁マイクロカプセルを被覆したチタンインプラントの製造においては,HAp中空粒子を被覆した後,芯物質を含浸させる手順が簡便に実施可能であるものと示唆された。
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