本研究では多機能性を有する新しい高性能圧電デバイスの創製を目的に、金属コアを有する圧電ファイバを金属に複合化したタイプの新デバイスの作製を試み、以下の成果を得た。 1)断面組織観察およびEPMAによる各種成分元素の線分析結果から、脆弱な金属コア圧電ファイバは、インサート材として純銅箔を用いる界面層形成・接合法(真空中(約50Pa)、温度873K、圧力2.2MPa、保持時間2.4ksのホットプレス実施)により、破断や反応劣化することなくアルミニウムに複合化可能であることが明らかとなった。また、中空圧電ファイバを用い、界面層形成・接合法により、アルミニウムへの複合化と同時に中空部に金属コアを形成するという画期的な方法も確立できた。 2)得られた複合材料の基本的な特性評価として、金属コア圧電ファイバ/アルミニウム複合材料につき分極-電界ヒステリシスループの測定を行ったところ、圧電性を有する可能性が示されたため、振動のモニタリングを試みた。その結果、本複合材料からの出力電圧は振動板の変位によく追従し、振動変位をモニタリング可能であることが明らかとなった。さらに、衝撃のモニタリングを検討した結果、本複合材料による衝撃エネルギーのモニタリングの可能性も示唆された。その際、繊維方向と直交方向で異方性が現れ、この性質は新たな機能として利用価値がある。 3)本複合材料は金属マトリックスであり、その樹脂マトリックス複合材料に対する優位性を、衝撃パルスに対する出力電圧特性として比較検討した結果、出力電圧応答の追従性に優れることが明らかになった。中空圧電ファイバ/アルミニウム複合材料についても同様の成果が得られた。
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