研究概要 |
Al-Mg-Si合金にAgおよびCu添加した合金を作製し、250℃以上の温度で時効処理、250℃、300℃、350℃、400℃時効を施し、時効時間に対する硬さの変化挙動と時効析出組織について調査した。 Cuを単独で添加した合金では、高温での時効により、正六角形状のMg2Siと同じ形態のQ相が共存しており、その区別は電子回折に頼らなければならないことが判明した。これは両相の区別が形態だけでは不可能であることを意味し、常に透過型電子顕微鏡による構造の確認が必要であることがわかった。また、このCuを単独添加した合金では焼入れ直後から試料中に長さ約1nm,幅0.5nm程度の非常に微細な析出物が観察されており、この合金の核生成が焼入れ時の冷却過程でも進行していることがわかった(Mater.Trans.掲載予定) さらにAgを単独添加した合金では、中間相β'にAgが含まれると考えられる分析結果が得られた。とくにMgとAgが置換していると考えられる結果が、電子回折と高分解能透過電顕観察における格子定数の算出結果から得られており、添加された元素が単にAl-Ag系の化合物を作らないことが判明した。また特筆すべきこととして、Cuを単独添加した合金の場合には、主に高温で時効した場合の中間相としては4元系AlMgSiCuの中間相Q'が観察されたが、Agを単独添加した合金では、前述のβ'相が高温まで安定であるとともに、4元系AlMgSiCuの中間相Q'と類似の化合物も観察されており、これら複数の中間相の共存がAg添加合金では可能であることがわかった。 AgとCuを同時添加した合金の523Kでの硬化挙動は、単独添加に比較してHVで30程度高く、また時効硬化速度も速いことがわかった。この合金における組織観察、とくに平衡相の形態と、ひずみ負荷での析出実験は19年度の予定である。
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