リチウムイオン電池(Lithium ion battery : LIBと略す)はエネルギー密度が二次電池中最も大きく、電源が小型化出来る利点があり大きな市場を形成している。しかしながら、中・大型のLIBは、「安全性が十分確保されていない」という理由からその実用化は未だ緒に着いたばかりである。LIBの安全上解決すべき主要課題は、(1)電解質の不燃化と(2)正極材熱暴走の抑制である。 そこで本研究は、従来までに申請者らが見出した新しい電池材料であるイオン液体と新しい電池構造設計を有機的に組み合わせ、上記(1)(2)の課題を解決した「高度の安全性を有する実用的不燃リチウムイオン電池」の創製を目的とする。 平成18年度は、上記(1)課題解決の為に、難燃性とイオン伝導性を併せ持つイオン液体に重合性の官能基を導入したイオン液体モノマーの合成を試みた。本研究で新規イオン液体モノマーの合成経路が確立出来、その物理化学特性とラジカル重合特性が明らかになった。このモノマーは高いラジカル重合性を有し、簡便なバルク重合により重量平均分子量数百万以上の巨大ポリマーとなる。これをゲストポリマーとして四級アンモニウム塩型イオン液体に溶解して得られるポリマーゲル電解質は、高イオン伝導性(10^<-4>S/cm @30℃)を示し、リチウムイオン電池用難燃性ポリマー電解質と機能することが明らかになった。次年度は小型リチウムイオン電池を試作してその実用性能を明らかにする予定である。
|