研究概要 |
(1)膨潤現象に関する基礎・基盤研究と(2)機械変形による構造色変化材料の基礎研究,(3)表示媒体の実現に必要な電場や光によって構造色を変化する新材料の探索のうち本年度は(1)と(2)の研究で進展があった。(1)ではシリカ粒子が立方最密構造の人工オパール薄膜を骨格としその隙間をアクリル系エラストマーで充填した有機-無機ハイブリット材料を用い、アクリルエラストマーの溶解度パラメータ,Sを膨潤によるブラッグ回折波長のピークシフトを利用して推定する方法を実証した。この方法ではSが既知の溶媒を用いてハイブリット材料薄膜を膨潤させピークシフト量,Δλを測定する。特性の類似した溶媒20種類ほどにおいて得られたデータをSとΔλの関係をプロットした。この結果、Δλの極大を与えるSが対象のエラストマーの溶解度パラメータと推測できる。参照実験として既存の溶解度パラメータの推定法としアクリルエラストマーのブロックを数日、それぞれの溶媒で膨潤させ、その膨潤前後の伸張度(L/L_0)とSの関係を調べた。(L/L_0)が極大を示すSがエラストマーの溶解度パラメータであるが、この既存の方法で求めた数値7.2と新手法の数値はほぼ一致した。新手法の測定では10mm薄膜では膨潤平衡に達する時間が1分程度に対し、既存の方法ではcm^3バルクでは膨潤平衡の到達時間が数時間から数日要した。また、測定法も新手法が光を用いた非接触であるに対し、既存の方法では測長のため溶媒から取り出す作業で測定の誤差を生ずることが避けられない。今後、膨潤現象に関して膨潤理論との比較検討を行う予定である。(2)については変形による伸び率とΔλの測定に必要な装置を作製した。また、考察に供する試料としてハイブリット材料をゴムシートにコーティングする試験片作製と歪みと波長シフト量のデータの取得が可能になった。弾性変形の理論との比較を行い変形による構造色変化に関して理解を深める。
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