研究課題/領域番号 |
18560684
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
篠原 嘉一 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料ラボ, グループリーダー (70343853)
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研究分担者 |
今井 義雄 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料ラボ, 主幹研究員 (40354138)
磯田 幸宏 独立行政法人物質・材料研究機構, 材料ラボ, 主任研究員 (80354140)
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キーワード | 高分子 / 熱電特性 / ポリチオフェン / 有機合成 / ゼーベック係数 / 導電率 |
研究概要 |
導電性高分子の導電率は、キャリア濃度以下に、直接的には単位体積当たりの主鎖の占有率、配向性、主鎖の直線性に大きく支配される。ポリチオフェンの場合は、分子鎖間伝導機構も大きなポイントとなる。今年度は、分子鎖間距離の大きく異なるポリチオフェンを合成し、主鎖間距離と伝導機構の関係を直接的に検討した。主鎖間距離が大きな物質として、側鎖にヘキシル基を有するポリヘキシルチオフェンを有機合成し、溶剤に溶かしてキャスト膜を作製した。この膜の導電率は約10S/cmである。主鎖問距離が小さい物質として、導電率が同じく約10S/cmのポリチオフェン膜を電解重合で合成した。 ポリヘキシルチオフェン膜は平面性・分子配向性が共に高く、主鎖分子は離れているが比較的直線的に等間隔に配列した構造である。それに対してポリチオフェン膜は分子配向が三次元的にランダムで、主鎖分子が絡み合うように接近した構造である。 これらの膜について導電率の温度変化を100-350Kの温度範囲で検討した結果、測定の全温度領域においてポリヘキシルチオフェン膜は最近接間ホッピング、ポリチオフェン膜は3D-バリアブルレンジホッピングを示すことが明らかになった。主鎖間隔が十分に大きい場合には室温以上においても最近接間ホッピング、主鎖が絡み合って接近した場合には低温においても3D-バリアブルレンジホッピングが生じることを示している。 前年度の結果と総合すると、高い熱電特性を有するポリチオフェン系材料を開発するためには、 1)主鎖間隔を制御して室温以上の温度域でも最近接間ホッピングを実現すること。 2)単位体積当たりの主鎖密度を高めて高い導電率を実現すること。 が必要となる。主鎖分子の配向・配列制御がポリマー系熱電材料実現の鍵になると言える。
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