研究概要 |
ナノNi粒子を分散したAl_2O_3ハイブリッド材料(Ni/Al_2O_3)に対して,0.05%のY_2O_3微量添加(Yドープ),lvo1%のSiC粒子共分散(SiC共分散)を行い,高温耐酸化性を検討した.Yドープ,SiC分散ともに耐酸化性は向上した.また,それぞれの酸化速度の温度依存性はNi/Al_2O_3に比べて大きくなった.酸化層におけるAl_2O_3粒径に有意な差異が認められないことから,このハイブリッド材料の酸化速度を律速するAl_2O_3粒界の拡散がYないしSiの粒界偏析により抑制されたと考えられる.しかしながら,酸化速度の低下は,YやSiによるAl_2O_3の粒界拡散低減に比べると小さい値であった.これは,Ni粒子の酸化により,Al_2O_3の粒界はNiとYよいしSiが添加されていることになっており,Niとの相互作用により,粒界拡散の抑制が低減されたものと考えられる. 一方,Ni/Al2O3が熱酸化処理により亀裂治癒ができることを見い出した.酸化温度の上昇により治癒時間が短くなることから,治癒時間の逆数の対数と絶対温度の逆数の関係を調査したところ,直線関係が得られた.その傾きから活性化エネルギを求めたところ,Al_2O_3粒界におけるNiイオンの拡散係数の活性化エネルギの報告値とよく一致した.以上のことから,この材料の亀裂治癒は,Al_2O_3の粒界を表面に向かって拡散した陽イオンが亀裂内部で酸化生成物(NiAl_2O_4)を生成し,その生成物が亀裂を埋めることで発現すると考えられる.また,SiCを共分散したNi/Al_2O_3はNi/Al_2O_3と同等の亀裂治癒速度を有した.したがって,SiC-Ni/Al_2O_3は亀裂治癒効果を維持させたまま,高温耐酸化性を改善できたことになる.
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