研究概要 |
輸送機械分野への応用が期待されている,マグネシウム合金と亜鉛メッキ鋼板との異材重ね継手形成に対し,摩擦攪拌現象を利用した重ね点接合法である摩擦点接合法を適用し,接合部断面観察によりその接合機構を詳細に検討するとともに接合部断面組織と機械的性質との関連性を調査する.また動的陽解法汎用有限要素法を用いた塑性流動解析を実施し,解析結果と実験結果を合わせて摩擦点接合法の接合因子となるツール形状,ツール回転数,ツール押込みパターンの最適条件を探索し,異材摩擦点接合プロセスの最適化手法を確立することを目的とした.前年度構築した,2次元軸対象モデルを用いた動的陽解法汎用有限要素法による塑性流動解析に基づく摩擦点接合シミュレータにより,ツール形状のうちプローブと呼ばれる突起長さを1.9mm,2.4mm,2.9mmの三種類に変化させた同種材同士のシミュレーションを実施した.その結果,プローブ長が増加すると計算速度および精度が低下し,収束性を確保するには頻繁なメッシュのきり直しが必要となること,また軸対称モデルでは,実接合における回転方向のひずみなどがモデル化できず,接合プロセスの最適化には不適当であること,周期境界条件により自由度を小さくした三次元モデル,あるいは回転方向ひずみを許容する一般化軸対称要素によるモデル化が必要であることが明らかとなった.一方,マグネシウム合金として広く用いられている板厚2mmのAZ31B合金の重ね継手の摩擦攪拌点接合性を調査した.プローブ長2.4mm,ツール回転数1750rpm,加圧力9.8kNの条件で接合時間を変化させた継手引張せん断強度は最大で4.2kNであった.断面観察の結果,温度上昇により材料が軟化し塑性流動域が広くなっていることが確認された.また,プローブねじの有無により接合強度が大きく変化する一方,プローブ長,加圧力の影響はほとんど認められなかった.
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