研究概要 |
グラファイトは,pKa=3〜4の弱酸性官能基を持つ.この酸性官能基だけが反応に関与する場合,pKa以下のpHに調整した溶液の中にグラファイトを投入して無機アルカリ(例えばKOH溶液)を滴下して滴定を行うと,グラファイト表面の親水基が酸として働き,これがアルカリ滴下量とpHとの関係(滴定曲線)に反映される,すなわち,粒子を含まない溶液に対して測定された滴定曲線と比べて同一アルカリ滴下量に対するpHは低くなる.2つの滴定曲線の差から官能基の総量が算出でき,グラファイト投入量とその比表面積がわかると試料の単位面積あたりの官能基量が算出できる. 一方,アルキル基を持つ有機アミンを塩基に用いて滴定する場合には,アルキル基がグラファイトの疎水面と相互作用するので,滴下したアミンの一部は粒子に取り込まれる.取り込まれた有機アミンはpHセンサーであるガラス電極には応答しないので,疎水面は見かけ上酸性基であるかのように振舞う.したがって,粒子を含まない溶液に対して測定された滴定曲線との差は,酸性官能基のみが反応する粒子(例えばシリカ粒子)と比較して,グラファイトのように疎水面を持つ粒子の場合にはさらに大きくなる.この現象はKOHのような無機アルカリを滴下したときには見られないので,KOHを滴下した場合の滴定曲線群と有機アミンを滴下した場合の滴定曲線群とを比較することにより疎水性度に関する情報が得られる. これらに関して,粒径が4〜6μmのグラファイト粒子を用いて測定を行った結果,めっきに用いる粒子の疎水性度評価法として利用可能であることがわかった.
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