研究課題/領域番号 |
18560707
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
藤田 大介 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, センター長 (10354367)
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研究分担者 |
大西 桂子 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, 研究員 (70354363)
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キーワード | 固溶 / ナノワイヤ / ナノドット / ナノベルト / 表面析出 / 走査型プローブ顕微鏡 / 走査型トンネル顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 |
研究概要 |
1.背景・目的 2003年にFujitaらが発見した"固溶炭素表面析出法"による低次元ナノカーボン創製法は、外部炭素源を必要としない新規のナノ構造カーボンの合成手法である。原子レベルでのナノカーポン創製メカニズムの解明に基づく生成制御技術の確立が課題とされている。そのため、本研究では超高真空(UHV)走査型プローブ顕微鏡(SPM)などを用いたナノ計測技術を開発することにより、炭素固溶金属基板表面におけるナノカーボン生成機構を原子レベルで明らかにするとともに表面析出ナノカーボンの成長制御技術の確立ならびに新規機能探索と応用展開を図る。 2.研究成果 真空固相拡散法により炭素を所定濃度(0.1〜0.3原子%)まで固溶させたニッケル試料(厚さ100ミクロン以下)を作成し、鏡面研磨+清浄化処理後、UHV(〜10^<-8>Pa)環境での熱処理により基板表面に成長させたナノカーボンをUHV-SPMや走査型オージェ顕微鏡により観測した。SPM計測としては、走査型トンネル顕微鏡/分光(STM/STS)ならびに非接触原子問力顕微鏡(NCAFM)計測を行った。2種類の異なる熱処理方法(徐冷型と急冷型)により、異なるナノ構造が表面に出現することが判明した。徐冷型(1350→850Kまで4.5K/min降温)の場合、多層グラファイト層の上に成長したナノワイヤ、ナノドット、ナノベルトならびに多様なモアレ表面超構造が観測され、その原子分解能計測に成功した(図1(a))。これによりナノベルト構造等の新規ナノカーボン構造体の創成メカニズムに関する重要な知見が得られた。徐冷された表面析出ナノカーボンは多層成長をするため、多くの歪み場が表面層に存在することになり、その結果として多彩なナノカーボン層が出現することが判った。一方、1350Kから急冷する熱処理(急冷型)を試みた結果、多様なナノカーボンの初期発芽過程に相当する微細構造が表面に形成されるとともに、単原子層グラファイトのドメインが出現することが判明した。一方、徐例型のナノカーポン構造体については、その応用展開としては、再生可能な高分解能STM探針としての性能評価を行い、良好な結果を得た。 3.今後の方針 近年、単層ナノグラフェンの有する機能や物性に大きな関心が集まっていることから、表面析出法による単層グラフェンの再現性のある創成技術を重点的に開発する。さらにUHV-SPM法の広範囲領域での温度可変計測技術の開発を目指す。
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