研究概要 |
"固溶炭素原子の表面析出現象"による低次元ナノカーボン創製法は、外部炭素源を必要としない新しいナノカーボン創製法(Fujita,2003,JJAP)であるが、メカニズム解明に基づく多様性の制御が課題とされている。本研究ではアクティブなナノ計測技術を用いて炭素固溶金属基板表面における生成機構を明らかにするとともに、表面析出ナノカーボンの成長制御技術の確立ならびに新規機能探索と応用展開を図ることを目的とする。 真空固相拡散法により炭素を所定濃度(〜0.3原子%)まで固溶させた各種試料(単結晶Ni(III),多結晶Ni,Pt,Co)を作成し、鏡面研磨+清浄化処理後、UHV熱処理(清浄化高温保持〜単層析出/多層析出処理〜冷却)により基板表面にナノカーボン被膜を成長させ、走査型プローブ顕微鏡(SPM)や走査型オージェ電子顕微鏡(SAM)により評価した。Ni-C合金の場合、異なる熱処理方法(徐冷・急冷)により、異なるナノ構造が表面に出現することが判明した。徐冷型の場合、多層グラファイト層の上に成長したナノワイヤ、ナノドット、ナノベルト、ナノクレバスならびに多様なモアレ表面超構造が観測され、創成メカニズムの解明につながる知見が得られた。また、HOPGを劈開した表面におけるAFM計測によりカーボンナノワイヤ構造が出現することを見出した(JJAP,2007)。徐冷された表面ではナノカーボンは多層析出するため歪みが表面層に誘起されるが、その結果として多様なナノカーボン層が出現することが判った。急冷型熱処理の場合、多様なナノカーボンの初期発芽過程に相当する微細構造が表面に形成されるとともに、単原子層グラファイトが出現することが判明した。徐冷型のナノカーボン(ワイヤ構造体)については、応用展開として、再生可能な高分解能STM探針、探針形状評価用試料としての有効性を検討した。Co-C系についてもNi-C系と同様の結果を得た。Pt-C系の場合、比較的大きな領域における単層グラファイト(グラフェン)被膜の生成に成功した。
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