研究概要 |
従来法による天然グラファイトの粉砕では,微小粒子を得るために長時間粉砕を行うことにより,グラファイト固有の優れた結晶構造が破壊されてしまい,その結晶構造に由来する機能性(電気伝導性,層状結晶内にゲスト分子を取り込む能力など)を阻害してしまう欠点がある。我々のこれまでの研究からの知見「天然グラファイトの乾式粉砕における粉砕雰囲気が,粉砕速度に大きな影響を及ぼすこと」に加えて,本研究により,微小ビーズを大量に用いた遊星ボールミル粉砕による天然グラファイトのマイルドな粉砕条件が存在することを見出した。これにより,高結晶性とナノ構造化(高比表面積)を両立させたグラファイト粒子の製法を開発した。つぎに,調整した高比表面積かつ結晶性の高いグラファイト粒子(結晶子サイズ30nm以上,比表面積300m^2/g以上)を用いて,従来合成が困難であった液相法でPtCL_<4->グラファイト層間化合物を合成に成功した。さらに本サンプルを水素還元し,貴金属原子Ptをゲスト剤としてもつ層間型触媒材料を作成した。本サンプルを用いて,ブタジエンの水素添加反応の特性を評価し,その触媒活性を有することを確認した。また,高結晶性とナノ構造化(高比表面積)を両立させたグラファイト粒子に,Pt粒子を担持させた触媒を作成し,担持用担体としての能力を評価したところ,従来の触媒よりも活性が高い条件を得た。以上の結果より,粉砕能力の高い優性ボールミルと微小ボールを大量に用いることで,マイルドかつ高頻度の粉砕操作を可能とし,高結晶性とナノ構造化(高比表面積)を両立させたグラファイト粒子の生成に成功し,この粒子は貴金属系グラファイト層間化合物の合成や触媒担体として優れた特性を有することを見いだした。
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