研究概要 |
PEG化蛋白質の噴霧乾燥法による粉末化に関する研究を遂行するため、平成19年度は以下の研究を行った. (1)リゾチームのPEG化 リゾチームとPEG化試薬をリン酸緩衝液中で反応させて,PEG化リゾチームを合成し,これを透析して凍結乾燥を行った.凍結乾燥粉末の収率は96%であった.凍結乾燥したPEG化リゾチームの活性を,マイクロコッカスを用いて測定したところ,約50%の残存活性が得られた.今後更に残存活性を向上させる手法の開発が必要である. (2)低温度熱風を用いることのできる賦形剤の粉末化 マンニトールは入口熱風温度が60℃の低温土でも粉末化することが可能であり,酵素タンパク質の製剤用賦形剤として有用であることが示された.マンニトールの乾燥粒子径はアトマイザー回転数と溶液流量で制御することができ,粒子径の大きい粉末の方が高い中空率を示した.また,入口空気温度100℃〜120℃で作製した粉末が最も高い中空率を示須子とが判明した. (3)微量タンパク質の添加による噴霧乾燥酵素粉末の表面構造変化 酵素溶液にBSAやラクトグロブリン(Lg)などの蛋白質を微量添加すると,噴霧乾燥による酵素の活性保持が増進されることはADH酵素を用いて実証されているが,この粉末表面の元素分析をESCAにより行った.蛋白質添加量が増大するほど、粉末表面上に占める蛋白質の割合が増加した.また,Lgの方がBSAよりも粉末表面上を占める割合が高くなった.これは,水中でのLg蛋白質の拡散率がBSAより大きいためではないかと考えられる.蛋白質は界面活性剤としての性質を持つため,噴霧器による液滴生成時に蛋白質が液滴の気液界面に配位し,このため,粉末表面上での蛋白質の占める割合が高くなり,液滴表面での熱風との直接接触による酵素の変性が防止され,酵素活性が保持されたと考えられる。
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