研究概要 |
ヨウ素イオンの光イオン化により水和電子を生成し、水和電子の反応に及ぼすマイクロ波の影響を調べた。室温における水和電子の寿命は約5マイクロ秒であった。温度40,50および60℃における反応速度の変化を,通常加熱およびマイクロ波加熱の場合について検討した。水和電子の減衰は,主に630nmの吸光度変化により追跡した。マイクロ波の強度は約50ワットから300ワットの範囲で行なった。水和電子の減衰は高い温度では速くなったが,本実験範囲では水和電子の減衰に及ぼすマイクロ波の影響は検出されなかった。つまり,通常加熱とマイクロ波加熱における水和電子の減衰は,温度が決まれば両者について実験誤差内で同一であった。水和電子の減衰反応は拡散律速反応に近く,活性化障壁が低いことがマイクロ波の影響が観測されない要因の一つと考えられる。 また,逆相ミセル内で水和電子の生成を行ない,反応におよぼすマイクロ波の影響を検討した。しかしながら,この反応系ではレーザー照射による熱レンズ効果のため,正確な反応動力学を測定で駅なかった。 マイクロ波による極性分子の回転を観測するために,時間分解蛍光異方性の測定を行なう準備を行なった。マイクロ波が作る電場により分子が回転するならば,蛍光異方性に変化が現れることが考えら得る。ピレン分子およびピレンブチル酸を用いた予備的な実験を行った。
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