前年度作製した光触媒被覆物では、ゼオライト粒子の反応物吸着により光触媒近傍の反応物濃度が高くなるため、反応液を低流速で流しても十分な分解活性が得られる。したがって、このような状況を想定した静置型装置を作製し、その性能を人工光と太陽光照射下で検討した。分解物質にはメチレンブルー(MB)と2、4-ジニトロフェノール(DNP)を、人工光源には6Wブラックライトランプを使用した。MBの分解は人工光源、太陽光の場合とも良好であった。しかし、DNPの分解は人工光で良好であったものの、太陽光ではほとんど進行しなかった。この原因としてDNP表面が太陽光照射下で親水化し、疎水性の強いDNPが接近しにくくなったことが考えられた。そこで、光触媒表面をシラン処理し、光触媒表面を疎水性とした。その結果、太陽光照射下のもとでもDNP分解が確実に起こるようになった。そこで、シラン処理条件と分解速度の関係を詳細に調べた。その結果、シランをトルエンに溶解する際の濃度は、2%程度が最適であることが明らかとなった。また、シラン処理法についても検討し、浸漬法よりも噴霧法の方がトルエンの使用量と処理の簡単さの点で優れていることを見出した。 本研究で作成した実用化装置は、角形容器の底面に溶射法により光触媒で被覆したステンレス金網を置き、その上に反応液を満たした後、その上部から太陽光を入射させる方式である。液の蒸発を防ぐため容器は透明ガラス板で密閉され、液はガラス板に固定した風車の回転により攪拌された。したがって全く人工的なエネルギー消費がない。今後、本装置の実用化についての検討を行う計画である。
|