研究概要 |
本研究では、申請者が空気処理プロセスの実用化においてこれまで蓄積した知識を生かし、水処理のための光触媒反応プロセスを実験と理論の両面から集中的に検討した。具体的には、金属板上に様々な金属微粒子を銃で打ち込み強固な金属膜を形成させる溶射法と呼ばれる塗装技術を導入することにより、光触媒微粒子とゼオライトの混合物をステンレス板上に溶射し、これを用いて様々な有機化合物を含む水溶液の処理実験を行った。溶射法により作製した金網上の酸化チタン薄膜は凹凸の大きなアナターゼ型粒子からなり、大きな比表面積を有していた。このことが反応速度の増大に大きく寄与した。光触媒金網を環状路型光触媒反応器へセットし、DNP(2,4-ジニトロフェノール)、MB(メチレンブルー)の分解反応実験を行い、本光触媒がDNP,メチレンブルーのいずれも迅速に分解すること、Langmuir-Hinshelwood型機構で分解されること、液循環流速の増大とともに分解速度も増加するが、より低流速域で境膜拡散抵抗が緩和され、高活性を示すこと、口径4Åが最良であること、ゼオライトの添加により分解速度が増大すること、混合比5%が最大活性を示すことが明らかとなった。また、反応物の境膜拡散とゼオライトへの吸着を考慮した光触媒反応モデルを用いることにより、ゼオライトによる反応物吸着に伴う光触媒分解速度の増加現象を説明することに成功した。 実用化装置開発のため、光触媒金網を底に静置した角形容器を用いてMBとDNPの分解を行った。MB分解は良好であったが、DNP分解はほとんど進行しなかった。そこで、光触媒表面をシラン処理により疎水化したところ、DNP分解も確実に起こるようになった。これは、太陽光を使った光触媒による排水処理の実用化を可能にする大きな知見である。
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