本研究は申請者らが見出した不均一系では特異なRu=O結合をもつRu種を効率よく生成させ、その酸化触媒としての機能を有効利用することが目的である。 まず、Ru=O種を確実に生成するセリア(CeO_2)担体について検討した。金属セリウムを2-メトキシエタノール中・高温で反応させるという本研究室特有のソルボサーマル法で粒径2nmのセリアコロイド溶液を得た。このコロイド溶液から塩基性溶液で凝集物を得た。これを焼成して得られるセリア担体にはRu=O種を持つRuが高分散で担持され、ベンジルアルコールの酸化に高い活性を示した。通常の硝酸セリウムから沈殿法で調製したセリアと比較して、コロイド法セリアの表面酸素放出能・移動性(酸化還元特性)は極めて高い。ソルボサーマル法で合成した超微粒子セリアが高活性Ru種を設計する上で極めて重要な役割を果たした成功例である。 また、超微粒子セリアコロイドから凝集体を作る際の凝集剤の種類、およびそれらの濃度を変化させることにより、凝集体の細孔の状態を自在に制御できた。細孔の制御によって担持Ru種の分散状態、ひいてはその酸化活性の制御が可能である。 セリア以外にもRu=O種を生成する担体の検索を行った。アルミナ・ジルコニアに加え、Y・La・Pr・Tb等の希土類、およびこれらの複合酸化物などである。結論として、これらすべての担体はRu=Oを持つ高度に分散したRu種を形成することはできなかった。このことはRu/CeO_2の特異性をさらに強調するものであり、今後この系がの種々の有益有機合成反応に適用できる可能性が示唆された。
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