研究概要 |
当研究グループにおいて銅イオン(Cu)を担持したZSM-5ゼオライト触媒(Cu/ZSM-5)が酸素を酸化剤とするベンゼンの気相接触酸化反応によるフェノール生成に対して活性をしめすことを見出した.このCu/ZSM-5触媒にアルカリ金属であるカリウム(K)を添加したK添加Cu/ZSM-5触媒によるベンゼンの気相接触酸化反応を酸素を酸化剤としてもちいておこない,添加Kの効果及び役割について検討した.含浸法によりCuとKを逐次的に担持したK/Cu/ZSM-5触媒を調製した.担持Cu量を一定にして,添加K量変化がフェノール収率・選択率に及ぼす効果を調べた.K/Cu比が0.2-0.3の付近でフェノール収率が2%から5%以上に増加し,少量の添加Kはフェノール生成に有効であることがわかった.CO_2およびCOの収率もKの添加量と共に増加する傾向を示したのでフェノール選択率は収率ほど顕著ではなかったがやはり増加することが認められた.K/Cu/ZSM-5触媒の焼成温度がフェノール収率・選択率に及ぼす影響について調べた.焼成温度の増加と共にフェノール収率は増加し約1220K付近で最大値をもち,さらに焼成温度を増加させるとフェノール収率は逆に減少した.フェノール選択率も触媒の焼成温度に対し収率と類似の挙動をとることがわかった.Kを添加しないCu/ZSM-5触媒においても焼成温度は同様の影響を与えるということはすでに当研究グループで報告している.以上のように添加Kの有無に関係なく焼成温度が触媒に対して大きな効果をもつことがわかった.K/Cu/ZSM-5触媒活性の反応温度依存性を調べたところ,673K付近でフェノール収率が最大となりそれ以上反応温度を増加させると,CO_2およびCOの完全酸化物の収率が大きく増加した.酸素分圧がフェノール収率・選択率に及ぼす影響を調べた.フェノール収率は酸素分圧が15KPa付近で最大値をとった.しかしその選択率は酸素分圧の増加と共に単調に減少する傾向を示した.定常状態後,酸素の供給を止めて生成物のプロセス時間依存性を調べた(過渡応答実験).CO_2およびCOの完全酸化生成物は酸素供給停止後ほとんど検出されなくなったが,フェノールはプロセス時間と共に減少するものの検出された.また還元されたK/Cu/ZSM-5触媒の酸素収着量の添加K/Cu比依存性はフェノール収率のそれと類似の相関をもつことがわかった.これらの結果から触媒上に吸着し活性化された酸素種がフェノール生成に関与していることが示唆された.
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