本研究では、イネのシステインプロテアーゼインヒビター(CPI)の網羅的な解析とヒト病原菌に対する抗菌活性の解明を目的とした。本年度において得られた成果は、以下のようにまとめられる。 1.オリザシスタチンIとIIに加えて、オリザシスタチンIV、VIおよびXIIを組換えタンパク質として調製し、それらのプロテアーゼ阻害活性、熱安定性などを比較検討し、それらの生化学的な性質を明らかにした。 2.米由来タンパク質の歯周病菌に対する抗菌活性を測定するために、マイクロタイタープレートを用いた濁度法に加えて、高感度なバイオアッセイ法として「ATP発光法」と「蛍光プローブを用いたDNA標識法」を確立した。 3.代表的な歯周病原因菌であるPorphyromonas gingivalisのLys-ジンジパインとArg-ジンジパインを阻害する活性を、新たに米糠タンパク質画分と精白米のタンパク質画分においてそれぞれ検出できた。 4.米糠抽出液を加熱処理した後、得られた上澄み液中の分子量1-16kDa画分にP.gingivalisの増殖を阻害する活性が存在することを新たに見いだした。この画分から抗菌タンパク質を陽イオン交換クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製した後、目的タンパク質を二次元電気泳動によって分離し、MALDI-TOF-MSを用いて同定を試みた。その結果、候補となる数種類のタンパク質を同定できた。
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