研究概要 |
液体燃料液滴の燃焼場に電界を印加するため,液滴を挟んで上部および下部に電極を配置し,直流高圧電源から電極へ電力を供給する方式の実験装置を構築した.浮力に対向して電気力を印加するため,これまでの研究結果に基づき,上部電極を正極,下部電極を負極とした.燃料液滴は,燃焼室中央部に細い石英製の懸垂線先端(直径0.125mm)の先端に固定された.使用する液体燃料は,従来の研究結果を参考にして,エタノール,正オクタン,トルエンの3種類を使用した.電極は,燃焼場の流れを阻害しないように,メッシュ状のものを配置した.電極間距離は50mm程度とし,電力を供給する直流高圧電源は,以前の研究で用いた既存の装置を使用した.供給可能な最大電圧は約10kVであった.液滴下部の電極は接地されており,上部の電極に正または負の電圧を印加することで,火炎に作用する電気力の方向を変化させた.燃焼現象の観察は,既存のカラーCCDビデオカメラおよび接写拡大撮影が可能な小型ビデオを用いて行なわれた.観測は2方向から行い,一つは液滴火炎の直接撮影により,電界印加による火炎(青炎または輝炎)形状の変形を観察した.青炎の変形は,燃焼場に誘起される流れ(自然対流とイオン風)により反応帯が移動する現象を示していると考えられる.もう一つの観測系では背景光(既存のランプまたは小型レーザ)を用いたバックライト撮影により燃焼中の液滴を観察した.以上の測定を,印加電圧(電界強度)および燃料の種類を変化させて実験を行い,液滴の燃焼特性に及ぼす電界強度の影響を明らかにした. これと平行して,液滴燃焼場に及ぼす電界の影響を調べるための数値計算手法の構築を開始した.電界中での燃焼について複数ある因子の中でも最も影響の大きいとされるイオン風の影響のみを考慮した解析を行った.扱うモデルは,比較的流れが安定でかつ解析が容易という特徴をもつ多孔質円筒バーナー火炎とした.アセチレンを燃料として火炎を形成させ,ここに電界を印加し,その挙動の変化を観測する.同時に電界の影響と考えられるイオン風を加味した方程式を離散化したモデルで数値計算を行い,詳細な各輸送変数の分布の推移より,実験との比較を合わせて電界下でのイオン風の火炎への影響ついて考察を行った.
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