本研究の最終目的は、空気を酸化剤として用いることができ、運転周波数を高めることが容易な、パルスデトネーションエンジン用の新しい燃焼器を開発することである。そのために、矩形断面型燃焼器の起爆に関する基礎研究を行う。起爆方式は、基本的に障害物方式であるが、障害物としては、既燃ガスのパージおよび可燃性混合気の充填の際の流れに平行な複数の障害板を並べて構成する。このような幾何学的配置を採用することによって、既燃ガスのパージおよび可燃性混合気の充填の際の流路抵抗を小さくし、デトネーションを起爆するための流れ場は流路と直交した方向に作り出す。なお、本研究は基礎研究であり、このような幾何学的配置におけるデトネーション発生条件を明らかにすることを目的とし、大がかりなエンジンシステムの開発は行わない。 平成19年度は、主として障害板列の形状・配置の最適化を目指し、実験的な研究を進めた。特に、圧力センサーとイオンセンサーとを大幅に増設し、燃焼器内部における衝撃波の発生・伝播、および火炎の加速の様子を詳細に調べた。混合気としては水素・酸素・アルゴンの予混合気を使用し、当量比を1に保ちつつ、アルゴンによる希釈率を変化させた。実験の結果、副燃焼室とは反対側の壁近傍で火炎の強い加速が生じ、デトネーションが発生することが明らかとなった。また、障害板同士の間隔および各障害板の断面形状がデトネーション起爆の成否を大きく左右することが明らかとなった。これらの成果は、平成19年12月に開催された燃焼シンポジウムにおいて発表した。
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