科学観測に使用される周波数が30GHz〜45GHzの宇宙用の10m径鏡面は0.3〜0.5mmrms程度の高い面精度が必要で、これに適合する鏡面構造として外側を三角形ケーブルネットで覆った風船膜構造を提案した。高精度に製作されたケーブルネットに張力を与えて全体形状の精度を出し、各三角形ファセット間を形状寸法精度の出難い柔軟な電波反射膜で覆った低コストで高精度な宇宙用鏡面である。昨年度、一昨年度と高精度ケーブル製造装置、鏡面の実証部分モデルの設計製造を行った。 今年度は試験治具の製造を行うとともに、実証部分モデルの形状測定試験を実施した。なおケーブルネット鏡面については、1)ケーブルと膜面の接合が不十分であったこと、及び2)鏡面内部の圧力漏れ防止のため、平面上に張架した40μmのポリエチレン膜にノーメックスコードで被覆したケブラーT29-400dからなるケーブルネットを組み合わせた鏡面とした。 形状測定試験は膜のみの変形試験とケーブルネット付き膜の変形試験よりなり、膜試験では内圧124Pa、230Paで、ケーブルネット付き膜試験では内圧122Paと225Paで鏡面変形を測定した。両者の試験の比較からケーブルネットによる変形拘束効果が定量的に明らかになった。 現在、変更した試験形状に対する膜変形解析も追加実施しており、試験との比較は報告書にまとめる予定である。
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