今年度は、接線ヤング率法において評価される屈曲点応力値に対する間隙水圧について検討した。具体的には、封圧10MPa・軸圧30%強度レベル・間隙水圧5MPaの下で1時間先行載荷した供試体について、(1)間隙水圧のみを増減させて、(2)有効封圧が一定になるように間隙水圧と封圧を同時に増減させて、(3)除荷して被覆を取り除いて、50%強度レベルまでの2回の繰り返し載荷を行い屈曲点応力を求めた。実験の結果、以下が明らかになった。 (1)の場合、先行載荷時の間隙水圧の±40%以内の時に、誤差10%以内で先行載荷時の全応力と差応力の値を評価できた。間隙水圧をそれ以上増減させると、評価される応力値が小さくなった。 (2)の場合、間隙水圧の増加に伴い全応力/軸差応力は増加/減少し、その傾向は直線近似できた。 (3)の場合、先行載荷応力の、全応力で45%、有効応力で58%、差応力で75%の推定値が得られた。これは、一軸状態での推定値をそのまま岩盤応力とみなすことには、かなり問題があることを示している。 上記のように、接線ヤング率法においては、間隙水圧の影響を無視できないので、三軸状態での繰り返し載荷試駐を数回行い正しい岩盤応力を評価する方法を提案した。 なお、DRA法でもほぼ類似の結果が得られた。このことは、現状でしばしば行われている一軸状態におけるDRA法での推定値をそのまま岩盤応力とみなすことに強い警鐘を鳴らすものである。
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