接線ヤング率法において評価される屈曲点応力値に対する島先行載荷時の封圧・間隙水圧・温度・繰り返し載荷時のひずみ速度の影響について来待砂岩供試体を用いて検討した。所定の封圧・間隙水圧下で先行載荷した供試体を一軸状態で繰り返し載荷すると、屈曲点応力=0.84軸差応力-0.21封圧-0.004間隙水圧となった。これは、一軸載荷で推定した屈曲点応力をそのまま原位置で供試体軸方向に作用していた応力成分とみなすことができないことを示しており、コア法による岩盤応力推定の現状に強い警鐘を鳴らすものである。 温度については、摂氏40度〜80度の水中で先行載荷した供試体を室温の気中で繰り返し載荷し屈曲点応力を求めたところ、この範囲では屈曲点応力に影響しないことがわかった。次に、繰り返し載荷時のひずみ速度については、気乾状態と飽和状態について、0.0036mm/min〜3.6mm/minであれば、屈曲点応力値と先行応力値の誤差が20%以内におさまることがわかった。それよりも遅い場合には先行載荷応力よりも7〜8割小さい屈曲点応力を得た。これは、2日以上の載荷となり、岩石が先行載荷の記憶を失いつつあったものと考えられる。上記よりも速い場合には、岩石が載荷途中で破壊してしまったが、これは、載荷装置の制御の限界によるものであり、上限のひずみ速度は明らかにできなかった。いずれにしろ、上記の結果は、限られた条件下においては、接線ヤング率法や類似のコア法の実施にあたって、原位置との温度の差は考慮しなくてよい、また、岩盤応力推定時のひずみ速度は極端に速かったり遅かったりしなければ応力の推定結果に大きく影響するものではない、ということを示しており、コア法の実用化に向けての大きな一歩といえる。
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