研究概要 |
多くの衛星搭載の光学センサで問題となっている校正基準出力値の時間変動について、原因として有力視されている分子ガスの吸着に注目し、光学系に及ぼす影響の定量評価を行った。 本年度はこれまでの実験室での測定結果を、軌道上で運用されている地球観測センサの出力信号の時間変位と比較した。比較に用いたセンサはみどり2号に搭載されたGlobal Imager(以下GLI),NASA打上げのAquaに搭載されたMODISおよび同じくNASAから打上げられたTerraに搭載されたMODIS(Aqua搭載機と同型機)の3種である。これらのセンサは可視〜赤外域に観測バンドを持ち、目的・構造ともに類似したセンサである。これらセンサは定期的に輝度一定の標準光源の測定を行っている。センサの特性劣化がなければセンサからは常時一定値が出力されるが、実際には時間経過とともに出力値は低下する。出力の絶対値はセンサ毎,観測バンド毎に異なるため、打ち上げ直後の出力値を用いて規格化した値を用いて比較した。その結果、3種のセンサの分光劣化特性は非常に良い一致を示した。各センサが独立に組立・試験を行ったことを考えれば、軌道上劣化は多くのセンサに共通する原因で発生することを間接的に検証できたことになる。次に有機ガス吸着による室内実験結果と比較したところ、3種のセンサ劣化特性は2-プロパノール,ジクロロメタン吸着の場合の分光特性で良く再現できることがわかった。一方で酢酸エチル吸着による透過特性ではセンサ出力変動を再現出来なかった。さらにセンサ劣化特性からガス吸着による分子膜厚の成長速度を推定したところ、指数関数則に従った変化を示すことが確認された。以上により、軌道上でのセンサ劣化現象と室内実験を繋げる成果を上げることが出来たと考える。
|