研究課題
基盤研究(C)
わが国には山間部、平野部を問わず普遍的にイオウ、ヒ素、重金属元素を含む海成泥質堆積物が分布している。泥質堆積物中のイオウは黄鉄鉱として堆積物中に存在し、重金属元素は黄鉄鉱中の不純物として含まれていることが多いが、この黄鉄鉱は酸化すると分解し、酸性水や重金属元素が溶出することが知られている。このため、今後の開発が予想される都市部地下に分布する泥質堆積物については、掘削工事などにともなって掘削残土処分地からの有害物質の溶出による環境汚染が懸念され、「土壌汚染対策法」施行後は管理型処分地などへ残土を処分することが求められている。そこで、泥質堆積物を埋め立てた処分地からの周辺環境への影響を把握するために、現地調査を行った。また、泥質堆積物からの有害物質などの溶出特性とその継続性を把握するために2種類の溶出試験を行い、その結果について熱力学的な解析による再現を試みた。これらの検討から、以下のことが明らかとなった。1)既設の残土処分地からの浸出水におけるイオン濃度や金属元素濃度は経過時間とともに低下する。2)平衡状態を模擬したバッチ式溶出試験では、有害な金属元素は溶出水が酸性となった場合に溶存する。また、水の流れのあるカラム式試験ではイオン濃度や金属元素濃度が低い値を示す。3)溶出現象の反応を黄鉄鉱の分解、方解石と斜長石の分解、石膏の析出と分解でモデル化して熱力学的な解析を行うことにより、溶出試験結果が再現できる。以上の結果に基づいて、仮想的な残土処分地からの浸出水水質の時間変化について熱力学的な試計算を行い、その結果が実際の現象等と類似することから、長期的な予測ができることを確認した。このような熱力学的な計算で残土処分地からの浸出水の水質変化を予測することにより、適切な浸出水の監視期間を設定することが可能となり、泥質堆積物からなる掘削残土を効率よく処分することができると考えられる。
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