ホタテガイ貝殻であればこそ可能な結晶の球状化技術を見出しており、球状化結晶の利用を目指す研究である。石灰岩では容易に代用できない技術であるから、球状であることを生かした用途に活用できれば、一気に貝殻のリサイクルは進むと考えられる。球状化は、貝殻を濃硝酸に溶解し、炭酸アンモニウム水溶液で再結晶させることで行うが、沈殿を白書顔料として、あるいはゴム・樹脂等への充填剤として利用するには、その粒径や白色度などを制御する必要がある。このため、沈殿作成時のpHや界面活性剤添加の影響を明らかにすることを試みた。この結果、球状粒子の作成への最適pHは約9であることが明らかにできた。またSpanなどの界面活性剤を添加するとわずかに分散性は向上したが、同時に球状粒子の表面が安定なカルサイト型構造に変化していることが明らかにできた。球状粒子がバテライト型の炭酸カルシウムのときは水中での安定性が低いので、界面活性剤の影響は有用な知見である。なお、プロパノールやブタノールなどのアルコール中では特別な処理なしでもバテライト構造を保つことを確認した。 球形粒子は溶液中に分散したとき、「ベアリング効果」と呼ばれる流動性の改善効果を示すことが知られており、球形の石炭灰(フライアッシュ)をセメント混和剤にする研究がおこなわれている。このテーマでは、球状粒子をセメント混和剤として約30%添加したとき、石炭灰同様の流動性改善効果を示すことを明らかにした。すなわち、水分量を減らしても、高流動性を示すので施工性がよく、なおかつ相対的にセメント分の重量を増やすことができるので高強度を保つことが期待される。このため、建築・土木用材料として大量に処理できると考えている。
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