研究課題
基盤研究(C)
ホタテ貝殻結晶を球状のバテライト型炭酸カルシウムとして再結晶させることは、ホタテ貝殻では容易であるが、石灰石では困難であった。このため球状化粒子の効果的な用途を見出せれば、ホタテ貝殻のリサイクルが促進できる。そこで顔料としての用途を想定して、再結晶化の諸条件の物性への影響を検討した。再結晶化時のpHは約9が最適であり、平均粒径は19.7μmであった。それ以上のpHではカルサイト型の角ばった結晶が混在した。球形粒子のハンター白色度は82.1で、一般的な再生PPC用紙の白色度に匹敵した。顔料のJIS試験の結果、pH、耐水性、耐溶剤にじみ性は、比較に用いた胡粉と差はなかった。しかし溶剤中の分散性はわずかに劣り、改良が必要である。球状粒子をコンクリート用の混和剤として用いると、フライアッシュ同様のベアリング効果による減水効果が期待できる。高性能AE減水剤を用い、再結晶化粒子とセメントを再結晶化粒子で置換したところ、重量置換率10%までは、著しい流動性の向上(減水効果)が観察され、その後流動性は低下し、30%以上の置換率ではほとんど流動性を失った。しかし、さらに置換率を増加させると、再び流動性の向上が観察された。30%を超える領域での流動性の増加は、フライアッシュ同様のベアリング効果によると考えられるが、低置換率での挙動は、高性能減水剤と再結晶粒子表面の化学種の化学反応を示唆するものである。貝殻は有機-無機複合体である。この研究ではこの構造を模倣した新しい機能性構造材料を作成することも目的とした。ポリアクリル酸の混在下で、貝殻結晶をキトサンをコーティングしたガラス基板上に再結晶させた場合、平均粒径が約5μmの球形粒子が密に析出した。しかしながら積層化しての十分な高強度化は達成できていない。
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