研究概要 |
非プロトン性溶媒においてウランの二組の酸化還元対が高速反応であることを利用し、風力発電等の出力平滑化のための二次電池を提案し研究している。負極活物質の充電状態であるウラン(III)錯体は、ピアソンのHSAB (Hard and Soft Acids and Bases)理論では分類されていない。ウランのIII価〜VI価全てに対して錯形成する配位子は、硬軟の両方の金属イオンに配位結合する必要がある。 置換マロンアミド誘導体は、抽出剤として広範囲に研究され、軽アクチニドのVI価、IV価や希土類のIII価、アメリシウムのIII価と安定錯体をつくり、核燃料再処理として開発されているDIAMEX法の有力な抽出剤である。昨年度N,N,N',N'-テトラメチルマロンアミド(Htmma)配位子のウラン(III)錯体を調製して検討を行い、配位によるウラン(III)の遍歴的性質を示唆すること、電気化学的検討より溶媒分子のDMFがHtmma配位子とウラン(III)イオンに対して競争的であることを示唆することの結果を得た。本年度は、溶媒中においてウラン(III)に対する安定な配位を目的として、プロトン放出能を有すると期待できるアミドを配位子とするウラン(III)錯体の検討を行った。 ウラン(III)の簡便な調製法を確立するとともに、これらの方法を用いてN,N'-ジメチルマロンアミド(Hdmma)の錯体U(dmma)4Cl3を調製した。本錯体について磁化率測定を行い、ウラン(III)錯体の物性について5f電子が配位結合に寄与しており、固体では安定であるということを示唆する。また、固体では安定な本錯体が溶液中では不安定となりその半減期が19.8時間であると判明した。本錯体のウラン・レドックスフロー電池への工学的な利用を考えると、半減期や酸化還元電位の面で依然として改善が必要であろう。
|