本研究においては、放射線や超音波を溶液に照射した際に引き起こされる金属イオンの酸化還元反応に件う「イオン-固体」変換過程の機構を明らかにすることを目的とする。放射線と超音波というそれぞれ異なる物理的意味を持つソースを用い、原子力分野において重要な長寿命核分裂生成核種(および核分裂により生成する希少元素)の化学反応を制御し、その反応機構等の学問的理解を深めるとともに、希少元素の分離への応用方法として新たな道を与える。平成18年度は、計画通り、超音波照射システムの設計と構築を行った。超音波を発生する振動子は水槽内に設置し、超音波は水をとおしてセルに伝播し、最終的にセル内の溶液に伝わる。超音波をなるべく効率的に試料溶液に伝播させるために、平らな底面を持ち、かつ厚みの薄い(1mm厚を予定)石英セルを設計し、これを作製した。また、種々の雰囲気において試料を扱えるようにするため、容器内へのガスの導入および試料溶液のバブリングが行うことができるようにしたほか、試料の一部を採取できるようにセプタム部を設けた。さらに、既存の瞬間マルチ測光タイプの紫外可視吸光光度計に光ケーブルカプラーを設置した。光ケーブルで接続された透過型プローブをセル上部からセル内に入れられるようにすることにより、溶液の吸収スペクトルをその場で観察できるようにした。システムの評価は、水の超音波照射に伴うOHラジカル量の定量をもって行う。OHラジカルの再結合反応により過酸化水素が生成するのでこの生成量を求める。また放射線量の評価に用いるフリッケ線量計も用いて比較する予定である。
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