研究概要 |
50μmのポリエチレンシートに陽子ビームを照射し,グラフト重合を行った.さらにその試料にイオンビームを照射し,グラフト重合を行った,入射陽子ビームのエネルギーは0.3MeVあるいは3MeVとし,モノマーはアクリル酸とアクリロニトリルを用いた,その試料の分析は重量測定,赤外線吸光分光を用いて行った,重量測定から2種類のモノマーがすべての試料に対してグラフト重合されているという結果は得られなかった.しかし,赤外線吸光分光から,シアノ基(アクリロニトリル)とカルボキシル基(アクリル酸)に対応する吸収線がすべての試料に対して観測された.これは,連続したイオンビームグラフト重合によって,異なるポリマー鎖が導入されたことを示している.ところでこれらは複数回のイオンビームグラフト重合が行えるかどうかを試した結果である.したがって,多層膜になっているかどうかの測定は行っていない. また,50μmのポリエチレンシートを6枚重ねた試料に3.4MeV陽子ビームを照射した,それぞれのシートをESR装置で分析し,ラジカルを測定した,これまで2MeV照射の場合得られていたスペクトルとは異なったスペクトルが得られた.前者はポリエニルラジカル成分が多いと考えられる.現在更なる解析を行っている. さらに,N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)とアクリロイルモルホリン(ACMO)モノマー(共に興人製)の重合を試みた.水溶性なので,海水などの水溶液中における吸着剤としては不向きであると考えられるが,共重合を行うことで,他の応用が考えられるかもしれない.
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