研究課題
超高輝度・超短パルス次世代X線放射光源であるERL放射光源(エネルギー回収型リニアック;Energy-RecoveryLinac=ERL)の実現に必要な電子ビーム動力学の諸問題のうち、入射合流部における非慣性電子相互作用の研究を行った。非慣性電子相互作用は、電子バンチが偏向軌道を通る時に現れる相互作用であり、横方向空間電荷、縦方向空間電荷、コヒーレント放射力などの総称として定義される。これらの相互作用の結果引き起こされる電子バンチのエミッタンス増大は、ERL放射光源で発生する放射光輝度の低下をもたらす。したがって、非慣性電子相互作用を詳しく研究し、これによるエミッタンス増大を補償するような設計を行うことは、ERL放射光源の設計研究における最重要課題のひとつである。われわれは、エミッタンス増大を最小にする入射器合流部の最適設計法、非慣性電子相互作用の解析が可能な粒子トラッキングコード、非慣性電子相互作用によるエミッタンス増大の測定手法、について研究を行った。入射器合流部の最適設計法では、合流部出口において、縦方向空間電荷力が作る電子軌道の分散をビームエンベロープと一致させることにより、エミッタンス増大が最小となることを示し、複数の効果(縦方向空間電荷、横方向空間電荷)によるエミッタンス増大が同時に補償されるような入射器合流部の設計が自動的に得られる手法を提案した。非慣性電子相互作用の解析が可能な粒子トラッキングコードは、研究代表者が過去に作成したトラッキングコード(Java)を、高速化と並列化が可能なC言語に移植し、非慣性電:子相互作用の計算ルーチンを組み込非慣性電子相互作用によるエミッタンス増大の測定手法として、ダブルスリット法を採用し、装置の設計と製作を行った。これらの研究の結果、非慣性電子相互作用の効果を最小にするERL入射器合流部の設計法が明らかになり、これを次世代光源であるコンパクトERL、大強度γ線源などの設計に適用した。
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