研究概要 |
本研究は,太陽光励起固体レーザーに薄ディスク型媒質と本研究で提案する独立のConical-toroidal反射鏡型光共振器を組み合わせ,簡素で合理的な構造を持ちつつ高効率,高ビーム品質の発振を可能にするシステムを提案,実証し,宇宙における太陽エネルギー利用を推進するものである.本年度は同レーザーに摘したレーザー媒質の候補として挙げられるCr/NdコドープセラミックYAGの特性を評価する研究を行った.セラミックYAGは近年開発された新しいレーザー媒質のためその特性は未知の点が多く,自ら計測する以外に太陽光励起レーザーとしての得失を知る手段はない.計測項目は媒質の蛍光線幅,蛍光半値幅,誘導放出断面積,飽和強度である.この際,Cr濃度0.1%,3%の二つの媒質を用意し,それらを市販のYAG結晶と比較した.三つの媒質のNd濃度は1%で等しく,Crドープの影響のみを抽出して評価した.また,Cr/NdコドープセラミックYAG可視光励起において蛍光寿命が数倍長くなるという報告があり,その点を明らかにするため波長808nmの半導体レーザー励起と疑似太陽光のキセノンランプ励起での違いを比較した.その結果以下のことが明らかになった.半導体レーザー励起においてはNd:Crコドープセラミックの特性はYAG結晶とほとんど変わらないという結果を得た.ただしドープ濃度3%のセラミックは蛍光線幅が0.1nmほど広くなったが,これはコドープされたクロムのデコヒーレンス効果で説明できる.一方,太陽光励起においては,Cr濃度0.1%のYAGセラミックで蛍光寿命が50%長くなったが,Cr濃度3%では予測されるような蛍光寿命の変化は無かった.蛍光線幅は808nm励起全く同じ飽和強度も計測誤差の範囲で808nm励起と一致した.従ってCr/Nd:YAGは単に吸収スペクトルが可視全域に広がるのみでその他の特性はYAG結晶と変わらないことが明らかになり,太陽光励起に適した媒質であること分かった.
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