平成19年度においては以下の成果を得た。 1)CCA1遺伝子のコケ・ホモログの機能解析 アラビドプシスの時計遺伝子CCA1/LHYのコケ・ホモログ遺伝子PpCCA1aとPpCCA1bについて、それぞれの遺伝子を欠損する単一遺伝子破壊株と、双方とも同時欠損する二重遺伝子破壊株を確立した。これらの破壊株においてPpCCA1bの発現リズムを調べた結果、単一破壊株では遺伝子破壊により概日時計機能は全く影響を受けていないこと、二重破壊株においては時計の周期が2-3時間程度短縮していることがわかった。これはアラビドプシス以外の植物で初めての時計遺伝子の機能解析例であり、植物における概日時計機構の進化を考える上で非常に重要な知見である。 2)PRR遺伝子群のコケ・ホモログの解析 アラビドプシスの時計遺伝子群AtPRRs(Pseudo-Response Regulators)の4つのコケ・ホモログ遺伝子(PpPRR1-4)それぞれの発現を半定量的RT-PCRにより詳細に解析した。その結果、すべてのPpPRRが主観的明期にピークを持つ概日リズム発現を示すが、そのピークの位相には数時間ずつずれが見られることがわかった。この結果は、アラビドプシスのPRR遺伝子群に見られる位相のずれを伴う概日発現パターンと同様であるが、その一方で系統解析の結果においては、両植物種のAtPRRsとPpPRRsのメンバー遺伝子にはオーソログ関係が見られなかった。これらの結果は、コケのPRRタンパク質群はアラビドプシスのPRRタンパク質群とは、少なくとも部分的に機能分化している可能性を示しており、やはり植物の進化を考える上で重要な知見といえる。さらに、プロトプラストを用いたトランジェントアッセイにより、PpPRR2とPpPRR4の上流ゲノム領域の解析を行い、両者ともに、CCA1-binding site(CBS)を複数持つ数百bpの領域に、リズム発現を制御するプロモーター領域があることをつきとめた。
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