研究概要 |
細胞周期調節因子の分解を制御する後期開始複合体(APC/C)の後期M〜G1期における活性化因子であるSte9(Cdh1ホモログ)が機能しない分裂酵母細胞では,Ras経路が強く活性化されると染色体分配異常を伴う異常な減数分裂が起こる現象を見つけている。この異常の分子基盤の解明を通し、減数分裂時の染色体分配を保証する細胞周期制御機構を調べる。本年度は以下の知見を得た。 1:Ste9,Slp1,Fzr1をはじめ分裂酵母が有する5種のCdc20/Cdh1類似蛋白質の各々の機能を調べた。生育と減数分裂に必須なのはCdc20ホモログのSlp1のみだが、減数分裂時にはCdh1類似のFzr1も第一・第二減数分裂のanaphase進行においてSlp1と重複した機能を有する。 2:相同染色体組換え欠損によって減数分裂時にスピンドルチェックポイントを活性化した場合、APC/C^<SlP1>の機能は阻害されるが、APC/C^<Fzr1>は阻害されない。 3:5種のCdh1類似蛋白質の変異株のうち、Ras経路の活性化により異常な減数分裂が起こるのはste9変異株のみである。 4:APC/Cの代表的基質であるサイクリンB遺伝子の機能を抑制した場合、主要なM期サイクリンのCdc13を除き、他の3種(Cig1,Cig2,Rem1)は異常減数分裂の進行に必要では無い。 5:外来性に添加した接合因子に依存して減数分裂進行を人為的に制御できる培養系を確立した。この半同調培養系を用いサイクリン蛋白質の量的変動を調べると、ste9変異細胞での異常減数:分裂進行に伴うCdc13サイクリンの分解パターンは、正常な減数分裂とは異なっている。 次年度は、染色体標識により異常減数分裂時の実際の染色体分配をモニターし、正常な場合とどう異なるか詳しく調べると共に、サイクリン蛋白質の分解制御異常がその原因となっているか検討する予定である。
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