研究課題
小笠原海域と熊野灘海域において、マッコウクジラのコミュニケーション音であるコーダの比較を行った。熊野灘海域で2004年〜2008年に録音された計29日77時間25分09秒、小笠原海域で1994年〜2008年に録音された計41日154時間05分30秒のデータを使用した。クラスター解析により、codaタイプを分類したところ、熊野灘海域で1043個、小笠原海域で1549個、計89タイプのcodaが見出された。codaを構成するクリックス数とcodaタイプは海域間で異なり、同じクリックス数のcodaの長さにも差異があった。このことから、両海域には異なる音声クラン(由来を同じくする母系集団の集合)が生息するということが強く示唆された。個体識別データベースから母系群であるユニットのcodaレパートリーを推定したところ、熊野灘海域は1つのユニット、小笠原海域は5つのユニットが確認された。熊野灘海域のユニットは++1/+1+1クランに属すると考えられた。小笠原海域のユニットはshortクランに属すると考えられたが,1つのユニットは、他の4つのユニットと異なるcodaタイプを35タイプ発しており、他と異なるクランに属する可能性が示唆された。さらに、小笠原海域で9月に11頭に対し吸盤装着型データロガータグを装着し潜水行動データを得た。これまでの熊野灘で得られたデータと比較すると、両海域では、餌を追尾していると考えられるバーストの特徴が大きく異なっていた。熊野灘の方が一潜水当りのバースト回数が顕著に多く、またバーストの方向は下向きであることが多かった。熊野灘と小笠原で異なるクランが生息することから、両者の採餌行動の差異は、クランの差異によるものである可能性がある。
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Proceedings of International Symposium on Underwater Technology 2007 and International Workshop on Scientific Use of Submarine Cables and Related Technologies
ページ: 467-471