1.貧栄養条件では根が大きくなるのが成長速度を最大化するためには必須である。それでは茎はどのような挙動を示すべきなのか、理論的な解析を行った。長期的には茎を少なくすることが成長速度を上げることになるが、短期的には茎を伸長させて自己被陰を減らすことでも成長速度を上げられることが明らかになった。セイタカアワダチソウの萌芽ではそのような成長を行っていた。 2.根の窒素吸収能力が低いと葉の窒素濃度をある程度下げることが最適な物質分配である。常緑樹の葉の窒素濃度の低さが根の効果によるのかどうかを明らかにするため、窒素吸収能力の高い根を常緑樹に接ぎ木することを試みた。常緑樹としてはセイヨウバクチノキ、落葉樹としてはウワミズザクラを用いた。昨秋に接いだ個体は葉の展開を始めており、平成20年度にはその効果が実験的に明らかになるはずである。また、逆の組み合わせの接ぎ木も成功しており、これによってさらなるテストが可能になるものと考えられる。 3.木本では一斉開花がおき、ある地域では同種の開花が数年ごとに同調する。その究極要因は明かではないが、至近要因は炭水化物の貯蔵量であると考えられている。この炭水化物の貯蔵量の増加から花芽分化に至る過程は、ジベレリンによって仲介されている可能性がある。そこで、平成19年に男体山のシラビソにジベレリン処理を行い、平成20年に開花するのかどうかを確かめることにした。ジベレリンは7月中旬に100ppmの濃度でシラビソの頂芽およびその周辺に散布した。
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