研究概要 |
ハイマツの年枝伸長量から気候変動による影響を検出するため,富山県立山山地において,標高の異なる4つの定点調査地を設定し,各ハイマツの当年枝の伸長様式を調査した。当年枝の伸長様式は標高の違いによる気温の変化と雪解け時期による違いによって集団間で異なっていた。当年枝の伸長量は,その年の夏の気温だけでなく前年の冬芽サイズの影響を強く受けていることが確認された。また,立山の山頂(別山)にてハイマツのコアサンプルを採取し年輪幅を測定したところ,年輪幅は0.1〜1mmの範囲内にあること,サンプル間で同調する傾向にあること,1980年代後半以降は幅の広い年輪が形成されている個体が多いこと等が明らかとなった。今後は伸長成長と併せて気象条件とどのような関係にあるのかを詳しい解析する予定である。 さらに、北アルプスの立山(別山)、南アルプスの仙の丈ヶ岳、光岳の各山頂に生育するハイマツを対象に、過去30年間の年枝伸長量をそれぞれ測定したところ、いずれの集団においても前年の夏の気温と年枝伸長量との間に正の相関やがみられ、さらに年枝伸長量は集団間で同調しており、調査した4集団のうち塩見岳を除く3集団においては年枝伸長量が経年的に増加している傾向にあること等が明らかになった。これらの結果は,ハイマツの年枝伸長量が気温の変動による影響を受けやすい成長量であること,広域的な気候変動による影響を評価する生物成長パラメータとして優れていることを示唆していると思われる。
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